昭和49年に起きた一家惨殺事件は、犯人が分からないまま50年がたちました。令和になって、あるアパートで見つかった変死体をきっかけに、止まっていた捜査がふたたび動き出します。
2020年代 10作
唐の都・長安で、腹を十文字に切り裂かれ、内臓を抜き取られた死体が次々に見つかります。捜査は道教の思想へとつながっていき、鍵を握るのは、奴隷の身分でありながら仙人の伝説を思わせる不思議な少年、「崑崙奴」でした。
戦後、アメリカの統治下にあった琉球の与那国島。体の一部を機械にした密貿易人・武庭純のもとに、殺人鬼となった元憲兵と、謎めいたアメリカ人女性から依頼が舞いこみ、純は世界規模の陰謀に巻きこまれていきます。
1996年、横浜で塾の経営者が殺されます。容疑者として浮かんだ元教え子は、2年たった今も逃げたまま。父親から虐待を受けている小学生、その友だち、殺人犯をかくまう女性、捜査を続ける刑事。4人の視点が少しずつ交わっていくミステリーです。
昭和18年、陸軍軍医の妻になった中久世美禰子は、大阪・船場の化粧品商「大鞠家」に嫁ぎます。夫が戦地へ向かったあと、古い商家に残された美禰子の前で、一族を狙った連続殺人が起こります。明治から戦後まで、いくつもの時代が交差する長編です。
昭和29年の大阪。政治家の秘書が刺し殺された事件をきっかけに、連続殺人が起こります。捜査にあたるのは、大阪市警視庁の若い刑事・新城と、国の警察から送りこまれたエリートの警部補・守屋。
昆虫が大好きな心やさしい青年・魞沢泉が、旅先で出会う事件の謎を解いていく5編の連作集です。表題作では、16年前の震災のときに目撃された、行方不明の少女の幽霊の話が語られます。どの話にも、人の悲しみや思いやりが隠れています。
巨大ショッピングモール「スワン」で無差別の銃撃事件が起き、21人が亡くなりました。生き残った高校生のいずみは、事件のさなかの行動を暴露され、世間から責められることになります。
2010年代 13作
昭和20年、終戦まぎわの北海道。アイヌの母と日本人の父をもつ特高の刑事・日崎八尋は、軍需工場の関係者を狙った連続殺人を追います。やがて陸軍の機密をめぐる陰謀に巻きこまれ、無実の罪で網走の刑務所に入れられてしまいます。
1985年、職業安定所で出会った葉子と希美は、生年月日が同じだと分かって親しくなります。葉子は障害のある甥の達也を連れて、東京の旧家で家政婦として働きはじめます。
昭和63年の広島。新人刑事の日岡は、暴力団との黒い噂が絶えないベテラン刑事・大上の下につきます。暴力団の息がかかった金融会社の社員が消えた事件をきっかけに、組どうしの抗争が始まり、2人は法すれすれの捜査で事態に立ち向かっていきます。
30歳の田中幸乃は、元恋人の家に火をつけ、妻と幼い双子の命を奪った罪で死刑を言い渡されます。産科医、義理の姉、中学時代の親友。彼女の人生に関わってきた人たちの視点から、報道されたイメージとは違う幸乃の姿が浮かび上がっていきます。
江戸時代を舞台にした、不思議な時代小説です。人の殺意が見える同心の熊悟朗、触れるだけで人の命を奪える女性の遥香、そして月から来たとも言われる謎の存在「金色様」。
死に場所を探していた大学生の種田静馬は、信州の山奥の温泉地を訪れます。そこで村の神の後継ぎとなる少女が殺され、片目の少女探偵・御陵みかげが推理に乗り出します。物語は2部に分かれていて、18年後、同じ場所でふたたび事件が起こります。
12世紀、ヨーロッパの北の海に浮かぶソロン諸島。領主ローレントが暗殺され、魔術によって操られた何者かが手を下したことが分かります。領主の娘アミーナは、旅の騎士ファルクとその従士とともに、8人の容疑者の中から犯人を探しはじめます。
戦時中の日本が舞台です。病院の院長の息子・雪麻呂と、その周りの人々、そして東南アジアの密林に棲むという爬虫類の姿をした「ヘルビノ」。奇怪な出来事が次々に描かれていきます。「粘膜」シリーズの2作目です。
強風の日、倒れた街路樹の下敷きになって、幼い子どもが亡くなります。新聞記者の父親は、事故の本当の原因を追いはじめます。見えてきたのは、多くの人たちの、ほんの小さな身勝手の積み重ねでした。
2000年代 17作
詐欺で生計を立てている中年のタケとテツ。2人の前に、まひろという少女が現れます。やがて彼女の姉と恋人も加わり、5人と1匹の奇妙な共同生活が始まります。それぞれに過去を抱えた彼らは、ある大きな計画に挑むことになります。
北陸の名家・青澤家で開かれた祝いの席で、17人が毒によって命を落としました。ただひとり生き残ったのは、目の見えない少女・緋紗子。やがてある青年が犯人とされますが、何年もたってから、関係者の証言を通して事件がもう一度たどり直されていきます。
日曜の昼、介護サービス会社の社長が、厳重なセキュリティで守られたオフィスで殴り殺されます。監視カメラには誰も映っておらず、逮捕された専務は犯行を否定します。弁護士の青砥純子と、防犯コンサルタントの榎本径が、この難攻不落の密室に挑みます。
主人公の成瀬将虎は、いくつもの仕事を掛け持ちする「何でもやってやろう屋」。知り合いから、ある事故の真相を探ってほしいと頼まれ、調査を始めます。現在と過去の話が行き来しながら進み、最後に大きな仕掛けが待っています。
1961年、衛藤たちは国の移民政策に応じて、南米アマゾンへ渡りました。ところが、約束されていた肥沃な農地は、手つかずの密林でした。病で多くの人が倒れる中を生き抜いた衛藤。
旧友に招かれて、マレーシアの高原リゾート、キャメロン・ハイランドを訪れた犯罪学者の火村英生と作家の有栖川有栖。滞在中、内側からテープで目張りされたトレーラーハウスで死体が見つかります。
18世紀末のカイロ。ナポレオンの艦隊が迫る中、若い官僚のアイユーブは、読む者を破滅させるという「災厄の書」を敵に献上する計画を立てます。その書をつくるため、毎夜、語り部の女性ズームルッドがひとつの長い物語を語りはじめます。
かつて裏の世界で「始末屋」として生きていた榊原健三は、山奥で静かに暮らしていました。ある日、昔の恋人・多恵子の息子が人質事件に巻きこまれたことを知り、健三は札幌へ向かいます。長編のハードボイルドです。
地球と月のあいだに浮かぶ巨大な博物館「アフロディーテ」。学芸員の田代孝弘は、脳に直接つながったデータベースを使いながら、音楽や絵画、工芸品など、収蔵品をめぐるさまざまな問題に向き合います。
四国の霊峰・石鎚山に登った少女・久坂優希と2人の少年。その帰り道、ある事件が起きます。17年後、看護師、刑事、弁護士になった3人が再会し、封じこめてきた過去と向き合うことになります。
海上自衛隊の最新鋭の護衛艦《いそかぜ》。艦長の宮津弘隆、先任伍長の仙石恒史、若い一等海士の如月行。それぞれの人生が、ある事件をきっかけに交わっていきます。文庫は上下巻の長編です。
1990年代 15作
自動車の部品をつくる会社で働く杉田平介。妻の直子と小学5年生の娘・藻奈美が乗ったスキーバスが事故にあい、直子は亡くなってしまいます。ところが、意識を取り戻した藻奈美の体には、死んだはずの直子の心が宿っていました。
深夜の弁当工場で働く主婦たち。その一人が、夫を殺してしまいます。仲間の雅子は、ほかのパート仲間を巻きこんで、遺体の始末を引き受けることになります。そこから、彼女たちの日常は大きく狂いはじめます。文庫は上下巻です。
新宿の中国系マフィアの抗争から2年。北京の大物が狙撃されたことをきっかけに、歌舞伎町の裏社会はふたたび緊張に包まれます。殺し屋の郭秋生と元刑事の滝沢は、前作の主人公・劉健一の思惑に振り回されていきます。『不夜城』の続編です。
箱に詰められた少女の手足が見つかる、奇怪な事件から物語が始まります。探偵の榎木津、作家の関口、刑事の木場。それぞれの形で事件に関わった男たちは、やがて古本屋の主人で陰陽師でもある京極堂のもとに集まります。
20年前、ある中学校のクラスで「恐怖新聞」と呼ばれる新聞が配られ、いじめが起きていました。いま、そのクラスの同窓会が開かれようとしています。記憶を失った男が復讐を企み、やがて殺人が起こります。過去と現在が交差する3部構成のサスペンスです。
民族学者の大生部教授は、アフリカの呪術の研究で知られ、テレビでも人気者です。けれど8年前にアフリカで娘を亡くし、妻は新興宗教にのめりこんでいました。大生部は奇術師の力を借りて、妻を取り戻そうとします。
1992年の東京で、ひとりの男が謎の死を遂げます。男の名はジャック・モーガン。北アイルランドの武装組織に関わっていた人物でした。
鎌倉にある奇妙な館「時計館」。建築家・中村青司が設計したこの館で、オカルト雑誌の取材班が交霊会を開きます。ところが霊能者が姿を消し、閉ざされた館の中で連続殺人が始まります。
嵐の夜、雑誌記者の高坂昭吾は、自転車に乗っていた少年・稲村慎司を車に乗せます。慎司は、人の心を読むことができる少年でした。2人はやがて、ある事件に巻きこまれていきます。超能力を持つがゆえの苦しみを描いた、宮部みゆきさんの初期の長編です。
新宿署の刑事・鮫島は、キャリアでありながら組織の中で孤立し、ひとりで捜査を続けています。その執念深さから、裏社会では「新宿鮫」と恐れられていました。歌舞伎町で警官が次々に撃たれる事件が起き、鮫島は銃を密造する男・木津を追います。
1980年代 13作
名門の私立中学で、ある生徒が殺されます。やがて、編集者の父親をもつ中学生が、その事件に関わっていたのではないかという疑いが浮かびます。息子を信じる父親は、真相を探りはじめます。
受賞作なし:第33回(1980年)
1970年代 4作
刑務所で知り合った3人の男が、出所後の資金を手に入れるため、紀州の大富豪・柳川とし子刀自の誘拐を計画します。ところが人質になった82歳の刀自は、身代金を100億円に引き上げるよう言い出し、誘拐劇の主導権を握ってしまいます。
交通違反の車を追っていた警察官の目の前で、車に隕石が直撃し、運転していた男が死んでしまいます。男の身元をたどった先は、江戸時代から続く玩具会社の一族。その屋敷で、次々に人が死んでいきます。
1961年、神奈川県の町で、飲食店を営む若い女性が刺し殺されます。逮捕されたのは19歳の工員の少年でした。裁判が進むにつれて、証人たちの言葉から事件の姿が少しずつ変わっていきます。
受賞作なし:第30回(1977年)、第29回(1976年)
1950年代 2作
1940年代 2作
戦後まもないころ、山奥の豪邸に、作家や画家、女優といった一癖ある人たちが集まります。入り組んだ人間関係の中で、次々に殺人が起こっていきます。すべて同じ犯人の仕業なのか、それとも別々の事件なのか。文豪・坂口安吾が書いた本格ミステリーです。
昭和12年、岡山の旧家・一柳家。かつて本陣(大名が泊まる宿)をつとめた家で、当主の賢蔵の婚礼が行われます。その夜、離れの部屋で、血まみれになった新郎新婦が見つかります。部屋は密室でした。名探偵・金田一耕助が初めて登場する作品です。
本屋大賞でも上位に入った日本推理作家協会賞受賞作
書店員が選ぶ本屋大賞と、ミステリー作家が選ぶ日本推理作家協会賞。選ぶ人も基準も違う2つの賞で、どちらにも名前が挙がった作品です。
- 『君のクイズ』小川哲:日本推理作家協会賞 第76回/2023年本屋大賞 6位
- 『土漠の花』月村了衛:日本推理作家協会賞 第68回/2015年本屋大賞 5位
- 『百年法』山田宗樹:日本推理作家協会賞 第66回/2013年本屋大賞 9位
- 『ジェノサイド』高野和明:日本推理作家協会賞 第65回/2012年本屋大賞 2位
- 『ジョーカー・ゲーム』柳広司:日本推理作家協会賞 第62回/2009年本屋大賞 3位
- 『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹:日本推理作家協会賞 第60回/2008年本屋大賞 7位
山本周五郎賞・本格ミステリ大賞・直木賞とダブル受賞した日本推理作家協会賞受賞作
- 『地雷グリコ』青崎有吾:日本推理作家協会賞 第77回/山本周五郎賞 第37回
- 『大鞠家殺人事件』芦辺拓:日本推理作家協会賞 第75回/本格ミステリ大賞 第22回
- 『蝉かえる』櫻田智也:日本推理作家協会賞 第74回/本格ミステリ大賞 第21回
- 『隻眼の少女』麻耶雄嵩:日本推理作家協会賞 第64回/本格ミステリ大賞 第11回
- 『果断 隠蔽捜査2』今野敏:日本推理作家協会賞 第61回/山本周五郎賞 第21回
- 『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午:日本推理作家協会賞 第57回/本格ミステリ大賞 第4回
- 『ミステリ・オペラ』山田正紀:日本推理作家協会賞 第55回/本格ミステリ大賞 第2回
- 『奪取』真保裕一:日本推理作家協会賞 第50回/山本周五郎賞 第10回
- 『エトロフ発緊急電』佐々木譲:日本推理作家協会賞 第43回/山本周五郎賞 第3回
- 『カディスの赤い星』逢坂剛:日本推理作家協会賞 第40回/直木賞 第96回
日本推理作家協会賞とは
日本推理作家協会賞は、1948年に「探偵作家クラブ賞」として始まった、ミステリーの賞のなかでも長い歴史をもつ賞です。前年に発表された作品から毎年選ばれます。このページでは、長編(いまの「長編および連作短編集部門」)の受賞作を載せています。このページでは、受賞作を新しい順に年代ごとに並べています(受賞作なしの回が3回あります)。第5回から第28回までは部門を分けずに選ばれていたため、この一覧には入れていません。2000年以降の作品を中心に、短い紹介を付けました。
受賞作・回・年は、日本推理作家協会の「推理作家協会賞一覧」で確かめました(2026年9月27日)。Kindle版の有無は同じ日にAmazonで確認したもので、変わることがあります。