2020年代 8作
幕末の横浜にあった港崎遊廓が舞台です。父の無実を明かすために遊女になった町娘の伊佐と、姉の心中をきっかけに本当の愛を探しはじめた鏡。2人の女性の物語が交互に語られ、イギリス海軍の将校メイソンとの関わりが、事件を解く鍵になっていきます。
人気アイドルの大峰颯太が、わずか3か月のトレーニングでボディビル大会の3位に入賞します。ネットではドーピングを疑う声が燃え上がりますが、本人は否定し、六本木にパーソナルジムを開きます。
小惑星「テロス」が日本に衝突することが分かり、世の中は混乱しています。そんな中でも、23歳の小春は福岡の自動車教習所に通い続けていました。ある日、教官のイサガワと教習をしていると、教習車のトランクから女性の遺体が見つかります。
博士号を持ちながら、30歳で北海道警察に入った沢村依理子。5年前に起きた未解決の誘拐事件で、被害者の遺体が見つかったことから、事件はふたたび動き出します。やがて捜査資料が外に漏れ、沢村自身が疑われることになります。
南宋の時代の中国。武術の達人・梁泰隆と、弟子の蒼紫苑、養女の恋華が、湖に浮かぶ楼閣で暮らしています。ある日、師匠が密室の中で死んでいるのが見つかり、紫苑は真相を突きとめようとします。武侠小説の形を借りた本格ミステリーです。
元刑事の藤巻は、軽い認知障害があると診断されます。そんな折、介護施設の前に置き去りにされた身元の分からない老人について、娘から調べてほしいと頼まれます。記憶が失われていく不安と向き合いながら、藤巻は老人の過去を追いかけていきます。
2010年代 10作
17歳の女子高生・市野亜李亜の一家は、全員がそれぞれのやり方で人を殺す殺人鬼です。西東京市の家でひっそり暮らしていましたが、ある日、兄が殺され、翌日には母が姿を消します。
ビデオジャーナリストの伏見が暮らす鳴川市で、いたずら事件が続き、やがて陶芸家が殺されます。現場には「道徳の時間を始めます」という言葉が残されていました。同じころ伏見は、13年前に起きたある事件のドキュメンタリー撮影を頼まれます。
目の見えない69歳の村上和久は、孫の腎臓移植のために検査を受けますが、適合しませんでした。兄の竜彦に検査を頼んでも、兄はなぜかかたくなに断ります。27年前、中国から帰ってきた兄の顔を、失明していた和久は一度も見ていません。
14年前に死刑が執行された連続殺人犯「ブージャム」。その名を継ごうとする者による、模倣の殺人が起こります。事件を追うのは、図書館で働く南條仁。
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の、13年後を描いた続編です。次男のイワンは、未解決事件を扱う捜査官になっていました。イワンは、かつて父フョードルが殺された事件をあらためて調べ直していきます。
変死体のそばから見つかった、呪いの札。文化人類学者の仲澤大輔は、その札を手がかりに、殺人事件の真相に迫っていきます。地方に残る古い風習と呪いが絡み合う長編ミステリーです。
失意のフリークライマー、水沢淶は、寺に居候しながら暮らしています。そこへ、皇居にある盆栽「三代将軍」を盗み出してほしいという依頼が舞いこみます。報酬は1億円。
小学校の卒業を前に、ある悲しい出来事とともに、1丁の拳銃をタイムカプセルに埋めた幼なじみの4人。23年後、ひとつの殺人事件をきっかけに、4人は再会します。
受賞作なし:第63回(2017年)
2000年代 13作
市原の交通刑務所の中で、受刑者のひとりが殺されます。遺体は、奇妙な「前へならえ」の姿勢をとっていました。同じころ、別の受刑者が刑務所から姿を消します。塀の中の密室で起きた事件は、やがて外の世界の思わぬ出来事へとつながっていきます。
昭和21年の夏、東京・成城に住む実業家の5歳の息子が誘拐されます。犯人は身代金を手にしたあと、子どもを連れたまま姿を消し、事件は解決しませんでした。それから15年後、ある殺人事件をきっかけに、あの誘拐事件がふたたび動き出します。
「現職の国会議員の中に、外国のスパイがいる」。その情報をもとに、警視庁の外事課に極秘の捜査本部が置かれます。指揮をとるのは女性のキャリア理事官。やがて、次の首相候補と目される大物議員の名前が浮かびあがります。
檜山貴志の妻は、生後5か月の娘の目の前で殺されました。犯人は13歳の少年3人で、年齢を理由に罪には問われませんでした。それから4年後、犯人のひとりが殺され、檜山に疑いがかかります。
洞窟に潜るケイブダイバーの東馬亮は、5年前の事故で恩師を死なせてしまった過去を背負っています。新潟の鍾乳洞の調査中、落盤で調査隊が閉じこめられ、洞窟が水に沈むまでおよそ5時間。
大手新聞社に内定した女子学生が、20年前に起きた誘拐事件の犯人の娘だと、週刊誌にすっぱ抜かれます。社主の命令で、ベテラン記者がこの古い事件を調べ直すことになり、隠されていた事実が次々と明らかになっていきます。
死刑囚の樹原亮は、事件が起きた時間の記憶を失っています。その無実を証明するため、刑務官の南郷と、前科を背負った青年・三上が調査を始めます。刑が執行されるまでの時間は限られていて、手がかりは死刑囚がかすかに思い出した「階段」の記憶だけでした。
連続爆弾事件の犯人のアジトで、ひとりの男が捕まります。鈴木一郎と名のるその男には、感情というものがまったくないようでした。精神科医の鷲谷真梨子は精神鑑定を受け持ち、男の正体を探ろうとします。そんな中、病院に爆弾が仕掛けられます。
1990年代 13作
自衛隊の勧誘員として鬱屈した日々を送る平貫太郎の前に、元自衛官の東馬修一が現れます。そのころアメリカ国防総省は、「12(トゥエルブ)」と名のる何者かに脅されていました。強力なコンピュータウイルスと、謎の兵器「ウルマ」。
銀行員の伊木は、債権回収を担当していた同僚の坂本が、アレルギーのショックで急死したことに疑問を抱きます。坂本は、伊木のかつての恋人・曜子の夫でもありました。伊木は坂本の仕事の跡をたどりながら、銀行の中に隠された暗部に踏みこんでいきます。
首都テレビの報道局で、ニュース映像の編集を担当する遠藤瑶子。映像の見せ方ひとつで視聴者の受け止め方を変えられる彼女の編集は、局内でも評価されていました。ところが、ある事件の映像をめぐって、瑶子自身が思いもよらない罠にはまっていきます。
八木薔子は、社内での恋愛が明るみに出て証券会社を辞め、今はスーパーやデパートで万引きを見張る保安士として働いています。ある日、かつての交際相手の妻が殺され、薔子に疑いがかかります。残されていたのは、謎めいた「ダイイングメッセージ」でした。
横浜の高級住宅街で、大物の弁護士が拷問を受けたうえ殺されます。捜査にあたるのは、横浜地検の新任の女性検事・岩崎紀美子。事件を追ううちに、弁護士の世界の内側と、過去のある事件が浮かびあがってきます。現役の弁護士が書いたリーガルサスペンスです。
32歳の村野ミロは、親友でノンフィクションライターの宇佐川耀子が、1億円とともに姿を消したことを知ります。ミロは、耀子の恋人で裏社会ともつながりのある成瀬時男に疑われながら、ともに行方を追うことになります。
元・食品衛生監視員の羽川は、親友の不可解な死をきっかけに、ある不正を追いはじめます。浮かびあがってきたのは、検査をすり抜けて持ちこまれる輸入食品の横流しでした。食の安全をめぐる、真保裕一さんのハードボイルド・ミステリーです。
1980年代 12作
舞台は私立の女子高校、精華女子高校です。生徒指導の教師が、校内の更衣室で青酸による中毒で死んでいるのが見つかります。「マシン」とあだ名される冷静な数学教師・前島は、自分も命を狙われていると感じながら、事件の真相を探ります。
江戸時代、わずか10か月ほどの間に多くの役者絵を残して姿を消した浮世絵師・東洲斎写楽。その正体をめぐる謎を追う大学の助手・津田のまわりで、浮世絵の世界の人々が次々に殺されていきます。美術史の謎と、現代の事件が絡み合う長編です。
東北の牧場で、競馬評論家の大友隆一と牧場長が撃ち殺され、サラブレッドの母子まで銃で撃たれます。夫の死に疑問を抱いた妻の香苗は、友人の芙美子とともに真相を追いはじめます。やがて2人は、競馬の世界を揺るがす秘密にたどり着きます。
百人一首にも名前のある伝説の歌人・猿丸大夫。その正体と、「いろは歌」に隠された暗号をめぐる歴史ミステリーです。友人の不可解な死をきっかけに、若き日の民俗学者・折口信夫が謎解きに挑みます。
1970年代 10作
1970年代のある高校。女子生徒の美雪が「アルキメデス」というひと言を残して亡くなります。その後、同級生の毒殺未遂や行方不明が続き、事件の裏にある若者たちの秘密が浮かびあがってきます。青春ミステリーの先がけと言われる作品です。
受賞作なし:第17回(1971年)
1960年代 9作
受賞作なし:第14回(1968年)、第6回(1960年)
1950年代 3作
本屋大賞でも上位に入った江戸川乱歩賞受賞作
書店員が選ぶ本屋大賞と、まだ世に出ていない原稿から選ぶ江戸川乱歩賞。選ぶ人も基準も違う2つの賞で、どちらにも名前が挙がった作品です。
- 『殺し屋の営業術』野宮有:江戸川乱歩賞 第71回/2026年本屋大賞 6位
直木賞とダブル受賞した江戸川乱歩賞受賞作
- 『テロリストのパラソル』藤原伊織:江戸川乱歩賞 第41回/直木賞 第114回
江戸川乱歩賞とは
江戸川乱歩賞は、江戸川乱歩の寄付をもとに1955年に始まり、日本推理作家協会が選んでいる賞です。第3回からは、まだ発表されていない長編ミステリーを募集する新人賞になり、多くの作家がこの賞からデビューしました。第1回は中島河太郎の『探偵小説辞典』、第2回は早川書房の「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の刊行に贈られたため、この一覧は第3回から載せています。このページでは、受賞作を新しい順に年代ごとに並べています(受賞作なしの回が4回あります)。2000年以降の作品を中心に、短い紹介を付けました。
受賞作・回・年は、日本推理作家協会の「江戸川乱歩賞一覧」で確かめました(2026年9月27日)。Kindle版の有無は同じ日にAmazonで確認したもので、変わることがあります。