コロッケが食べたくなる小説、として語られることがとても多い作品です。紹介している人がそろって「読むならお腹を空かせた状態で」と言っていて、惣菜屋の揚げ物の描写がそれだけ強く残るようです。
物語は、主人公の柏木聖輔が二十歳の秋にひとりになるところから始まります。父を三年前に亡くし、女手ひとつで東京の私大に通わせてくれた母が急死する。経済的な理由で大学を中退し、次の一歩が踏み出せないまま日が過ぎていきます。そんなある日、空腹に引き寄せられるように入った砂町銀座商店街の惣菜屋で、最後に残った五十円のコロッケを見知らぬおばあさんに譲る。そこから縁がつながって、その店で働くことになる——この出だしの運びが良いという感想をよく見かけました。
紹介している人たちが口をそろえるのは、「たったひとりになった。でも、ひとりじゃなかった」という受け止め方です。惣菜屋の店主や同僚、商店街の人たち、高校の同級生、バンド仲間。聖輔が出会う人たちの多くは、彼に温かい手を差し伸べます。なかでも「人に頼ることを覚えろ」と言われる場面を挙げる人が複数いて、何でもひとりで抱え込もうとしていた聖輔にとって、そして読んでいる側にとっても、気持ちが楽になる言葉だったと語られていました。
一方で、聖輔を利用しようとする人も出てきます。母の死後に何度も金の無心に来る親戚から彼を守ったのは、店の先輩でした。良い出会いばかりを並べた話ではなく、そのぶん温かさのほうが際立つ、という読まれ方をしています。
最後の一行にすべてが詰まっている、という言い方も複数の人がしていました。本屋大賞の大賞受賞作は誰もが紹介するけれど、あえて二位のこの作品を取り上げたい、と話していた人もいます。
はっきり意見が割れる点は見当たりませんでした。見た範囲では、人と人のつながりの描き方を素直に受け取っている感想が中心で、「人によっては最後に泣く」という言い方がされることが多かったです。
いちばん見られているのは、ペキョの小説紹介とかの紹介で、大賞作ではなくあえて二位のこの作品を取り上げた理由から、揚げ物の描写の力まで語られています。
オトメニア チャンネルは、聖輔が一年のあいだに出会う人たちを一人ずつたどりながら、「頼っていいと言ってくれている人に頼る」という場面の意味を丁寧に話していました。書店員の立場からは、ザ本屋さんチャンネルが「たったひとりになった、でもひとりじゃなかった」という一節を挙げて薦めています(再生回数は2026年9月時点)。