いくつかのYouTubeの感想やインタビューを見ましたが、この本の語られ方はかなりはっきりしています。
まず、これは「推し活そのもの」の話ではなく、推し活を作る側の話だということ。物語を使って人の視野を狭め、のめり込ませていく。その仕掛けを、教会が信者を集めるやり方に重ねているのがタイトルの「メガチャーチ」だ、という説明は、どこで見てもだいたい同じでした。
登場人物は三人。仕掛ける側の父、はまっていく娘、推しを失った女性。感想を話す人はたいてい「自分は誰に近いか」から入ります。同じ動画の中でも、父に近いという人と娘に近いという人に分かれていて、そこがこの本の面白いところなのだと思います。
推し活をしている人ほど、痛いと言います。「わざと視野を狭めているのは自分だ」と気づかされた、と。逆に推し活の経験がない人は、「こういう世界なのか」と少し引いた場所から観察するように読めたと言い、推しがいる人が読んだらきついだろうな、と気遣っていたりします。芸人さんが「推される側として読むと居心地が悪い」と言っていたのも印象に残りました。
意外だったのは、朝井作品の中では読みやすい、と言う人が多かったことです。もともと新聞連載で、アイドルやファン文化の用語がひとつずつ説明されているので、その世界を知らない人でも追える。『正欲』や『何者』より分かりやすかった、と言う人もいました。
| 論点 | 一方 | もう一方 |
|---|---|---|
| 読後感 | 痛いけれど共感する(推し活の経験がある人) | 観察として面白い(経験がない人) |
| 終わり方 | 余韻を残さず切る形が斬新で今らしい | 救いがなく、受け止めきれない |
| 本屋大賞らしさ | 印象の強さで選ばれたのは納得 | 完成度で言えば2位『熟柿』だった |
終わり方については、好き嫌いというより「例年の本屋大賞にあるヒューマンドラマではない」というふうに言う人が多いようです。受賞については、書店員の投票の得点(1位452点、2位419.5点)を挙げて、完成度よりインパクトが支持されたのでは、と話している人もいました。
本屋大賞のノミネート作は、毎年ひと通り読んでいます。本が好きで読んでいるので、ここには「他の人はこう受け止めているけれど、自分はここが違う」と思ったことだけを書くつもりです。
この作品については、推し活の経験があるかどうかで読み方が分かれる、という上のまとめがそのまま当てはまると感じました。どちらの読み方も作品の側に用意されていて、どちらで読んでも損はしない本だと思います。
『イン・ザ・メガチャーチ』はAudibleの聴き放題対象で、再生時間は15時間43分です(2026年9月時点。対象は入れ替わることがあります)。受賞作の中では長いほうなので、通勤や散歩の時間を毎日まとめて使える人向きです。
ナレーターは岩崎了さんと大森ゆきさんの二人体制です。
岩崎了さんはアーツビジョン所属の声優で、テレビアニメでは『僕のヒーローアカデミア』の敵〈ヴィラン〉連合・スピナー役(2018年〜)、『イナズマイレブンGO』の錦龍馬役(2011〜2014年。劇場版『究極の絆 グリフォン』『vs ダンボール戦機W』でも同役)を演じています。ゲームでは『テイルズ オブ ベルセリア』のパーシバル・イル・ミッド・アスガード役、『イナズマイレブン』シリーズの錦龍馬役。吹き替えでは映画『ホワイトハウス・ダウン』のコンラッド・サーン役があります。オーディオブックの朗読も多く、『きいろいゾウ』(2020年・ムコ役)、『夢をかなえるゾウ』シリーズ(2020〜2021年)、『【新釈】走れメロス 他四篇』(2019年)などを読んでいます。
大森ゆきさんは、ゲーム『オーバーウォッチ』のブリギッテ・リンドホルム役(2018年〜。短編アニメ「Honor and Glory」「Zero Hour」でも同役)の日本語ボイスで知られる声優です。テレビアニメでは『ちはやふる3』(2020年)の藤崎女子生徒役、『政宗くんのリベンジR』(2023年)の叔母役、『リンカイ!』(2024年)のアリーナアナウンス役など。海外ドラマ『トランスポーター ザ・シリーズ』のザラ役の吹き替え、オーディオブックでは『魔法少女育成計画』シリーズ、『QED』シリーズ、『二十四の瞳』などの朗読を担当しています。
本屋大賞の受賞作でAudibleにあるものの一覧は、ブログ「あの空の下」の本屋大賞の受賞作、Audibleで聴けるのは14作品にまとめています。
いちばん見られているのは、著者の朝井リョウさんが出演したTBS CROSS DIGの「言いたいこと」ほど伝わらない — 朝井リョウと考える「物語」の力で、100万回以上再生されています。PIVOTのインタビュー、受賞会見を収めたoriconの動画もそれぞれ数十万回見られています。
本の読み解きとしては、flier公式チャンネルの『イン・ザ・メガチャーチ』から読み解く「ファンダム経済」と、BS12「BOOKSTAND.TV」の著者インタビューが分かりやすく、作家の石田衣良さんが大人の放課後ラジオで本作を取り上げた回もあります。
このページの「受け止め方」は、こうした動画に加えて、かだおだチャンネル、語彙力0なので本1000冊読んでみる人。、やまゆか書房など、一般の読者の感想も見てまとめたものです(再生回数は2026年9月時点)。