現役の心臓外科医が、職業人の目でこの小説を検証している動画があります。「医療的にありえないだろう」という箇所を探しながら読んだけれど、ほとんど見つからなかった——そう話していました。著者自身が医師なので、そこは注意して書かれているのだろう、と。この作品の評価のされ方が、よく表れているやりとりだと思います。
主人公は平良祐介、医師八年目の心臓外科医です。大学病院に勤める彼は、教授からある取引を持ちかけられます。三人の研修医を心臓外科に入局させられたら、症例の多い病院へ出向させてやる。できなければ、そうではないところへ回す——。さらに教授を陥れる怪文書が出回り、祐介は犯人探しにまで巻き込まれていきます。
読んだ人が挙げるのは、医療の現場そのものよりも、そこで働く人の立場の描き方です。八年目、九年目という中堅の医師が抱える苦しさ、優秀な後輩との間に生まれる軋轢。そういう人間関係がリアルだ、という感想が出ていました。
最後の十ページでぞくぞくした、一気読みで止められなかった、という読まれ方もしています。ミステリーの仕掛けと、医療現場を舞台にした人間ドラマの両方を持つ作品として受け取られていました。
作中の忙しさをどこまで現実と重ねるかで、受け取り方が変わります。現役の外科医は、作中の医師がずっと多忙で、当直が週三回といった描写が続くことについて、「そういう人も確かにいるけれど、そこまで一般的ではないのではないか」と補足していました。
その人は同時に、待機のために病院に残らなければならない時間の使い方など、システムや文化に由来する部分もある、とも話しています。読んで「心臓外科医は大変すぎる」と思った人に向けて、必ずしもそこまでではない、と伝えたいという言い方でした。
いちばん見られているのは、JAPAN MEDs -Team WADA-の動画で、アメリカで働く現役の心臓外科医が、職業人の目で作品を検証しています。どこがリアルで、どこは一般的とは言えないかまで踏み込んでいて、この作品ならではの読み方ができます。
著者自身の言葉は、著者にきく!本TUBEのインタビューで聞けます。書き直しの経緯や、主人公をどう造形したかが語られています(再生回数は2026年9月時点)。