説明が難しい本、という言い方をされることが多い作品です。紹介している人自身が「本当にねえ、説明が難しい」と言いながら話し始めるくらいで、そこがそのままこの本の性格を表しています。
物語の鍵になるのは、『熱帯』という一冊の本です。誰も最後まで読み通したことがない、幻の小説。その結末を知りたいと願う人たちが次々に現れて、その先を追いかけていくうちに、読んでいる側もいつの間にか別の物語の中にいる——そんな入れ子の構造になっています。時間軸を行ったり来たりするので、読み進めるうちに「これはどういうことだ」と分からなくなって前のページに戻る、ということが何度も起きた、と語られていました。
謎が謎のまま残る部分もかなりあります。それを持て余す感じも含めて、この本の面白さだと受け取る人が多いようです。読んだ人同士で「自分はこう読んだ」と語り合う読み解きの会が開かれていると紹介している人もいて、一人で読み終えて完結する本ではなく、話したくなる本として扱われています。
読み終えたあとに何が残ったか、という問いに対して、「当たり前だと思っていることを一度疑ってみるのはどうか、と言われた気がした」と話している人がいました。筋を追って納得する読み方ではなく、足場を外される感覚そのものを味わう本、という受け取られ方です。
この読後のもやもやを、豊かさと取るか散らかりと取るかがはっきり分かれます。ある紹介者は「なんだか気持ち悪い、もやもやする」という気持ちが大きかったと正直に述べたうえで、それが読書という体験の素晴らしさなのか、それとも単にとっ散らかっているだけなのか、自分には判断がつかなかったと語っていました。
森見登美彦さんの作品を読み慣れているかどうかでも、入り口の感じ方が変わりそうです。著者自身がこの作品を「我ながら呆れるような怪作である」という趣旨で紹介しているとのことで、そこを楽しめるかが分かれ目になります。
ぱくゆうチャンネルは、直木賞候補作を全部読む企画のなかでこの本を取り上げていて、読んでいる最中の戸惑いから、読み終えたあとに残った問いまで、率直に語っています。
森見登美彦さんという作家そのものについては、文学系チャンネル【スケザネ図書館】が、最初の出会いから読んできた順番まで、ファンの立場でまとめています(再生回数は2026年9月時点)。