全作品インデックス
全国書店員が選んだ、いちばん売りたい本
火のないところに煙は

火のないところに煙は

芦沢央 著 / ミステリ

怪談話を集めるフリーライターが遭遇する、現実と非現実の境界が揺れる傑作ホラー。

読者の受け止め方

「本当はおすすめしたくないんですけれど」——紹介している人がそう前置きする本は、そう多くありません。レビューを録りながら今も鳥肌が立っている、この本のことをできれば思い出したくない、と話している人がいました。

六つの話からなる連作短編集です。第一話は、作家の「私」が怪談の原稿を依頼されて戸惑う場面から始まります。書いたことのないジャンルであることに加えて、実話怪談を書くことに強いためらいがある。過去に自分が体験した、たった一つと言っていい怪現象があったからです。あのとき自分がうまく立ち回れていたら、あの不幸は避けられたのではないか——そう考えて、「私」は依頼を受けることにします。

この「私」が著者と同じ名前であることが、この作品の仕掛けの中心です。どこまでが現実で、どこからが作り話なのかがわざと曖昧にされていて、読んでいる側は足場を失っていきます。本そのものにも仕掛けが施されている、と語っている人もいました。

怖がらせ方が独特だ、という点でも受け取り方が一致しています。主人公は怪現象を理詰めで考え、推理小説のように謎へ迫っていく。そのぶん怖さは一度やわらぐのに、読み進めるうちに「自分はもう手遅れのところまで来てしまった」という不安がじわじわ育っていく、という読まれ方です。

終盤ではミステリーのように伏線が回収されます。確かめようと前のページに戻ると、やはりそうなっている。確認できたからといって怖さが薄れるどころか、むしろ増していく——そこが普段のミステリーでは味わえない読書体験だった、と評価されていました。

分かれる点

どこで怖くなるかがはっきり分かれます。ある人は「最終話の終わりが見えてくるまでは、怖くはなかった」と言い、別の人は「決して夜に読んではいけない」「一日一話ずつしか読めなかった」と話しています。

読むタイミングを選ぶ本だ、という点では共通していました。寝る前ではなく、心が元気なときに読むのがいい、という薦め方をしている人もいます。

著者が語っていること

2019年の他のノミネート作

2019年の全10作品を見る →

同じジャンル「ミステリ」の大賞受賞作

ジャンル「ミステリ」の全作品を見る →

こんなところでも紹介されています

いちばん見られているのは、ミステリー文学の本棚の紹介で、ホラーとミステリーがどう融合しているのかを、ネタバレを避けながら解説しています。ホラーが苦手な人がこの本に挑んだ記録としても読めます。

ほしのえチャンネルは、著者の経歴から第一話の入り口までを丁寧にたどったうえで、「本当はおすすめしたくない」と言いながら薦めるという、この本らしい紹介をしています(再生回数は2026年9月時点)。

← 2018年2020年 →
※ 当サイトはAmazonアソシエイト・プログラム、および楽天アフィリエイトの参加者です。リンクを経由してご購入いただくと、サイト運営者に紹介料が支払われます。
Amazonのアソシエイトとして、本屋大賞ガイドは適格販売により収入を得ています。