「この世界に愛は存在しません」。入学式の翌日、数学教師がそう口にした言葉に、教室でただ一人反応した生徒がいました。それが主人公のワイルド曽田アイです。
アイは、アメリカ人の父と日本人の母のもとで育ちますが、血のつながった娘ではありません。1988年にシリアで生まれ、養子として引き取られた子どもです。優しい両親のもとで何不自由なく育ちながらも、「なぜ自分だけが選ばれたのだろう」「自分は不当な幸せを手にしているのではないか」という問いに、アイはずっと悩み続けます。数学教師が言った「この世界に愛は存在しません」という言葉——数学でいう「i」は虚数を指す言葉でもあります——は、本来ここにいるはずのない自分に、そっと寄り添う言葉として響いた、と語られていました。
この物語の特徴として挙げられていたのは、アイの成長と並行して、実際にその時々に起きた地震や戦争、世界情勢が描き込まれている点です。物語の中だけの出来事ではなく、現実の社会で起きていたことがアイに影響を与え、物語そのものを動かしていく。自分について考えることが、そのまま社会について考えることにつながっていく構成だ、という紹介のされ方でした。
読んでいて共感した、という声も多く見られました。「一人の方がいい、きっとその方が楽だ」と自分に言い聞かせながらも、夜になると涙がこぼれてしまう——そうした孤独の描写に、自分の経験と重ねて読んだ人がいました。「感謝とか幸せって努力して思うことではない」という一節を挙げて、苦しいときに苦しいと言っていいのだと救われた、という感想も紹介されていました。
ハラハラする展開を求めるかどうかで受け取り方が分かれます。ある紹介者は、この作品は「じっくり考える」タイプの小説で、この先どうなるのかというドキドキ感はあまりない、と述べていました。そうした展開を求める読者には物足りない一方、自分自身や社会についてじっくり向き合いたい読者には強く刺さる、という見方です。
元気なしなしが、孤独や自己肯定感というテーマに寄り添いながら、印象的な一節を引用して紹介しています。
BookTuber コーンは、この作品の特徴を「じっくり考える小説」と表現し、個人の物語がそのまま社会の物語につながっていく構成を丁寧に解説していました(再生回数は2026年9月時点)。