実際に起きた未解決事件をモデルにした、バリバリの社会派作品だ、という紹介のされ方をしています。1984年から1985年にかけて日本の菓子メーカーを標的にした一連の企業脅迫事件がモデルで、「昭和最大の未解決事件」とも言われる出来事です。
主人公の曽根俊也は、京都でテーラーを営む青年。自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、そこに録音されていたのは幼い頃の自分の声で、それは日本を震撼させた脅迫事件で実際に使われた「子どもの声」と同じものでした。一方、毎日新聞の記者・阿久津英士も、この未解決事件を追ううちに、同じ衝撃的な事実にたどり着きます。二つの視点が交わりながら、事件の真相に迫っていく構成です。
読んだ人がもっとも強調していたのは、著者が重ねた取材量の凄まじさです。著者はこの作品を書くにあたって、事件当時二年分の新聞をすべて読み込んだとされています。作中に登場する新聞記者が英検準一級の資格を持つ設定にあわせて、著者自身も英検準一級を取得してロンドンへ取材に行ったというエピソードも紹介されていました。
着想のきっかけは、犯行時に子どもに声を録音させていたという事実を知り、「その子どもは今どんな人生を送っているのだろう」と疑問に思ったことだったと語られています。そこから構想十五年を経ての出版だったとのことです。
読み終えたあとに置かれているあとがきを読んで、この作品が実在の事件にほぼ忠実に描かれていたことを知り、本当に衝撃を受けた——そう話す紹介者は、犯行の内容や警察の捜査までが史実に沿っていたことに鳥肌が立った、と振り返っていました。
見た範囲では、評価が割れる点は出てきませんでした。フィクションかノンフィクションか判別がつかないほどのリアリティが、この作品の特徴として一貫して語られています。
ミステリー文学の本棚が、実在の事件との対応関係や著者の取材の徹底ぶりまで、詳しく紹介しています。五百三十五ページの大作ですが、後半に向かうにつれて引き込まれた、と話していました(再生回数は2026年9月時点)。