読後にしみじみするタイトルだ、と紹介している人が口をそろえる作品です。「みかづき」という言葉の意味は、最後まで読むと分かる仕組みになっていると語られていました。
物語の始まりは昭和三十六年。小学校の用務員として働く大島吾郎は、子どもたちに頼まれて勉強を見ているうちに、いつしか「大島教室」と呼ばれるほどの評判を呼びます。そこに現れたのが、冴えた目をした小学一年生のふき子。決して勉強ができないはずがない子が、なぜここに来たのかと不思議に思う吾郎の前に、後日、母親の千明がやってきます。「私の道連れになってほしい」と、自分が立ち上げようとしている塾へ誘う千明に、戸惑いながらも吾郎は応じることになります。
当時の日本では「塾」というもの自体がまだ何なのか分からない存在でした。今では誰もが当たり前のように通う塾を、一から作り上げていく男女の物語です。ただし、それだけの話には終わらない、という受け取り方をしている人が多くいました。完璧ではないけれど愛すべき登場人物たちが、理想を求めて懸命にもがく姿に、いつの間にか引き込まれ、何度もため息をついた、という読み方です。
昭和から平成を生きてきた人なら誰でも共感できる何かがある、という言い方もされていました。自分の生き方や家族のことで不甲斐なさを感じている人にこそ、「人生はそんなに捨てたものではないかもしれない」と思わせてくれる物語だ、という受け取られ方です。
見た範囲では、評価が大きく割れる点は出てきませんでした。塾という日本独特の教育制度の成り立ちを背景にしているため、その時代を知っている読者ほど深く共感しやすい、という傾向はありそうです。
いちばん見られているのは、集英社文芸公式による紹介で、出版社の視点からタイトルの意味と物語の広がりが語られています。
BookTV358は、塾というものが「何それ」と言われた時代から物語が始まる面白さと、読み終えたあとに残る温かさを詳しく紹介しています(再生回数は2026年9月時点)。