超一流の殺し屋なのに、家では妻に頭が上がらない——そのギャップがこの作品の核だ、と語られることが多い作品です。
主人公の兜は、コードネーム「カブト」で知られる一流の殺し屋です。普段は文房具メーカーの営業として働きながら、裏で殺し屋稼業を十年ほど続けています。恐妻家の彼は、仕事で夜遅く帰ったことを妻に悟られないよう、においの残らない魚肉ソーセージを選んで食べる——という具合に、殺伐とした仕事の裏で家庭内の気配りに全力を注いでいます。この「非日常と日常が奇妙に混ざり合う」感覚こそがこの作品の魅力だ、という紹介のされ方をしていました。
仲介役の医師は、引退したがっている兜になかなか辞めさせてくれません。「まだ投資が回収できていない」という理屈で引き止められながらも、兜は残された家族のために、これ以上ボタンを押したくないと感じている。自分がやってきたことの報いは受け入れつつも、家族だけは守ろうとする——その矛盾を抱えた姿が胸を打つ、と語っている人もいました。
伊坂幸太郎さんの他の作品、とくに『グラスホッパー』『マリアビートル』と同じ「殺し屋業界」の世界観でつながっている点も、この作品の楽しみ方の一つとして挙げられています。以前の作品に出てきた殺し屋の名前が本作の中で言及されたりと、シリーズを読んでいるとより楽しめる仕掛けがあるとのことでした。
見た範囲では、評価が大きく割れる点は出てきませんでした。ただし『グラスホッパー』『マリアビートル』を読んでいるかどうかで、世界観のつながりを楽しめる度合いは変わりそうです。
矢上真吾のYouTube読書教室が「伊坂ワールド」と題したシリーズで本作を取り上げていて、主人公の家庭内でのエピソードから、他作品とのつながりまで詳しく紹介しています。続編にあたる回では、『グラスホッパー』『マリアビートル』に登場した殺し屋との関係も語られていました(再生回数は2026年9月時点)。