
生きるために国を出た母、サリマ。夫と一人息子を連れて、戦火が追いかけてくる中で二人目の息子が生まれます。周囲からは長くは生きられないだろうと言われた子ども。なんとかたどり着いた新しい土地で、サリマは安全な暮らしを手に入れますが、夫は出ていってしまいます。二人の息子を育てるために、朝と呼べないような早い時間から働き始め、そのかたわらで職業訓練校に通い、英語を学び始める——そんな女性の物語です。
紹介している人が強く印象に残ったと語っていたのは、言葉が通じないこと、外国人であることが、そのまま差別につながっていく場面でした。作中に登場する日本人女性は、求人に日本人の名前で応募しても連絡が来ないのに、外国名で応募したらすぐに電話がかかってきた、というエピソードを語ります。名前による差別という、目に見えにくい現実が描かれている、という受け取り方でした。
一方で、この作品全体に流れているのは人の優しさだ、とも語られていました。同じコミュニティで学ぶ人たちが支え合い、助け合うことで、サリマは新しいスタートを切っていきます。息子の通う小学校で「私の故郷」という題名で話してほしいと頼まれたサリマが、たどたどしい英語で自分の歩んできた道のりを語る場面が、とくに心に残るエピソードとして紹介されていました。先生が「これは故郷の話ではなく、あなた自身の物語だから」とタイトルを引き直し、サリマの名前に書き換える場面に、救われた気持ちになった、という感想です。
生と死、言葉と差別、孤独と仲間——さまざまなテーマが描かれる中で、とくに圧倒的な生への肯定が印象に残る、と語られていました。故郷では草原の果てに沈んでいった太陽が、今では海に沈んでいく。そのオレンジ色の光景が、すべてを肯定してくれているように感じられる、という読み方が示されていました。
見た範囲では、評価が大きく割れる点は出てきませんでした。移民や難民としての経験に馴染みがあるかどうかで、共感の深さは変わりそうです。
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