舞台は十八世紀のベネチア。「ピエタ」とは、捨て子が後を絶たなかった当時、教会が運営していた孤児院の名前です。実在した施設をもとにしていて、子どもが育ち、親の経済状況が上向いたときに引き取りに来られるよう、預けるときに証拠になる品を一緒に残していく、という制度があったことも紹介されていました。
主人公のエミーリアと、その友人アンナ・マリーア。二人が育ったピエタ慈善院には「合奏合唱の娘たち」と呼ばれる仕組みがあり、ある程度の年齢になった子どもたちが音楽と歌を教わり、コンサートを開いて施設の運営費を稼ぐ、という制度がありました。そこで教えていたのが、作曲家ヴィヴァルディです。
紹介している人が語っていたのは、この作品に繰り返し出てくるメッセージです。一般に「人のために働きなさい」「自分より他人を優先しなさい」と言われがちだけれど、この物語はむしろ逆のことを伝えている、という読み方でした。まず自分の気持ちを大切にすること。そうすることで自分自身が満たされ、結果として人のために働けるようになる——そういう順番が示されている、という解釈です。
物語は、捨てられた幼い頃から始まり、二人が年老いるまでの長い時間を追っていきます。その過程で、多くの登場人物が世を去っていく。人は死ぬと忘れられていく一方で、忘れられたくないという欲求は年齢とともに強くなっていく——そうした生と死をめぐる感慨も、この作品の重要な部分として語られていました。
見た範囲では、はっきりと意見が割れる点は出てきませんでした。史実に基づいた施設や作曲家が登場するため、歴史や音楽への関心があると、より深く楽しめる作品のようです。
読書の達人が、ピエタ慈善院という実在した施設の成り立ちから、物語に流れる「まず自分を大切に」というメッセージまで、詳しく紹介しています(再生回数は2026年9月時点)。