高校生の頃、主人公「俺」には不思議な同級生がいました。大きな体に大きな傷跡を持ち、いつもクラスに馴染めずにいた深沢暁。ある日「俺」が「お前はアキマケ・トシネンに似ているね」と口にしたことをきっかけに、彼はフィンランドの俳優の名を名乗るようになり、クラスの人気者に変わっていきます。奨学金に頼りながら大学に通い、テレビ制作会社に就職していく「俺」と、俳優を目指して劇団に入る深沢暁。2人のそれぞれの人生が、貧困や虐待、過剰労働といった日本の現実と向き合いながら描かれていく作品として受け止められていました。
日本にも貧困があると頭では知っていても、これまで積極的に目を向けてこなかったことに気づかされ、自分がいかに見て見ぬふりをしてきたかを痛感した、という感想を見かけました。「努力は報われる」という考え方の裏側で、努力する機会すら与えられないまま搾取されていく人生があることを、この物語を通して初めて実感した、という声もありました。
とても重いテーマを扱っているため、読む人やタイミングを選ぶ作品だと感じながらも、読み終えたときに不思議な力を受け取れる、という受け止め方が中心でした。著者自身が「ハッピーエンドではない」と語っている通り、単純な救いを描くものではないものの、それでも読者に前を向く力を与えてくれる小説として評価されていました。
とくにはっきり分かれる点は見当たりませんでした。見た範囲では、テーマの重さに向き合う覚悟を評価する声と、読む人を選ぶという受け止め方の両方が見られました。
いちばん見られているのは、直木賞作家・又吉直樹さんが語るトーク番組で、小説家としての視点を忘れて没頭できた作品として紹介されています。