僻地の貧しい漁村で、2年続きで不漁に苦しんでいた村人たちのもとに、ある晩、1隻の船が近づいてきます。しかし積み荷はほとんどなく、乗っていた者たちは全員飢えて死に絶えていました。彼らが着ていた揃いの赤い衣服を分け合ってから間もなく、村を恐ろしい出来事が襲う——嵐の夜に浜で火を焚き、近づく船をわざと座礁させて積み荷を奪う「お船様」という村独自の風習を軸にした異色の長編小説です。この本を紹介した書店員は、2020年に感染症関連の書籍を探していたときにこの作品と出会い、あまりの面白さと恐ろしさに、実話が下敷きになっているのではと思うほどだった、と語っています。
著者の吉村昭さんは綿密な取材で知られる作家ですが、本作はわずか二行ほどの記録からこれだけの物語を膨らませて書かれたと紹介されています。特定の地域や時代を明示しない書き方によって、全国どこの読者が読んでも「どこかで聞いたことがある話だ」と感じられる普遍性を持っている、という評価もありました。
海の向こうからやってくるものを「福の神か祟り神か」と捉える民間信仰、そして生き抜くための知恵として共同体が背負ってきた責任のあり方が、読み進めるほどに恐ろしくも納得させられる形で描かれている、という受け止め方が中心でした。姥捨てをテーマにした作品と同様、当時の人々にとって「仕方のないこと」として受け入れられていた風習の意味が、物語を通じて腑に落ちていく感覚があった、という感想もありました。
とくにはっきり分かれる点は見当たりませんでした。見た範囲では、わずかな記録から膨らませた物語の説得力と、共同体の生存をめぐる重いテーマを評価する声が中心でした。
いちばん見られているのは、本屋大賞発表会での推薦スピーチで、未来屋書店の書店員による作品の推薦理由が詳しく語られています。
このほか、紹介動画も見て、このページをまとめました(再生回数は2026年9月時点)。