地元の長崎から大学進学のために上京してきた、横道世之介という十八歳の青年の一年間を描いた物語です。紹介している人は、この本を買った直後、最初の数ページで一度挫折した経験を正直に語っていました。物語は四月、新宿駅の東口に降り立つ場面から始まるのですが、そのゆっくりとした足取りの描写に「早く進めよ」と焦れてしまうほど、のろのろとしたテンポで書かれている、という感想です。
それでも、しばらく本棚で眠らせたあとに最後まで読み通したところ、印象が大きく変わったと語っていました。東京という街に馴染めず、新宿をうろうろしていた世之介が、実は愛おしく思えてきた、という振り返りです。物語の後半で、ある人物から「世之介から隙がなくなった」と言われる場面があり、それが読んでいて腑に落ちた、と紹介されていました。何か大きな事件をきっかけに世之介の価値観が劇的に変わるわけではなく、間抜けなところは残ったまま、じんわりとした変化が描かれている、という受け止め方です。
大学の友人、先輩、高校の同級生、教習所で出会ったお嬢様など、さまざまな人たちと関わりながら、東京での生活に少しずつ染まっていく世之介の姿が、地元を離れて一人で新しい環境に飛び込んだ経験がある人には、とくに響くのではないか、という感想も語られていました。
序盤のゆったりとしたテンポをどう受け止めるかで、読み進めやすさが分かれます。紹介者自身、最初は挫折してしまったと正直に語っていて、最後まで読み通すとその意味が分かる、という構成になっているようです。
-古本屋アトラクト-が、最初に挫折した経緯から、読み通したあとに感じた世之介への愛着まで、率直な対話形式で紹介しています(再生回数は2026年9月時点)。