YouTubeでいくつか感想を見ましたが、この本は語る人がとにかく多くて、しかもみんな楽しそうでした。
誰もが最初に話すのは、主人公・成瀬あかりのことです。閉店する西武大津店のテレビ中継に毎日映る、M-1に出る、200歳まで生きると宣言する。変わり者だけれど、全部本気。帯の「かつてなく最高の主人公現る」という一文が、そのままあちこちで引用されていました。
構成の話もよく出ます。成瀬本人の視点ではなく、幼なじみの島崎、地元の住民、他校の男子生徒といった周りの人の目で、章ごとに成瀬を見ていく連作短編。「なんだこの子は、と読んでいるうちに人物像が浮かび上がってくる」「純度の高い青春小説」「これは絶対に映像化される」と、みんな楽しそうに話しています。
それから「爽やか」「明るい」「読みやすい」。重い受賞作が続いたあとの新しい風だ、と言う人が多く、1章ずつ完結するので読みやすい、「人の目が気になる」「やりたいことが分からない」人に勧めたい、という話もあちこちで聞きました。本屋大賞という賞を知らなかった人が「すごく面白かった」と言っていたのも、この本らしいところです。
舞台の滋賀県大津市への愛着も、この作品の読まれ方を決めています。実際に2020年に閉店した西武大津店、琵琶湖、膳所。ニュース番組は「滋賀愛に溢れた本」として扱っていましたし、批評の座談会でも「地元」愛のヒロインとして話されていました。ご当地小説として読んでいる人がかなりいます。
| 論点 | 一方 | もう一方 |
|---|---|---|
| 成瀬という人物 | 憧れる、応援したくなる | 実際にいたら迷惑。巻き込まれる島崎には「絶対なりたくない」 |
| 成瀬の見た目 | 美人かどうかの描写が無いのが良い | こういう行動を取る人は実際は見た目がいいはず、と映像化の配役を話題に |
| 読者層 | 本を読まない人にも届く | 文学性を重視する読者には軽く映るかもしれない(座談会で「読んでいる人が周りに少なかった」) |
「友達になりたいか」で意見が分かれるのが、この作品らしいところです。シリーズを3巻まで読んだ人は、中学・高校では浮いていた成瀬が大学では自然に受け入れられていく変化を、「自分たちにも覚えがある」と言っていました。
Audibleで本屋大賞の受賞作を聴き始めるなら、私はこの作品を最初の1冊に勧めています。5時間4分と、聴き放題になっている受賞作の中でいちばん短く、1章ごとに話が区切れるので、散歩や家事の合間に少しずつ聴いても迷子になりません。
上のまとめにある「友達になりたいか」で分かれる点は、読んだあとに誰かと話したくなる種類のもので、私はそこがこの作品の良さだと思っています。続編2冊も出ていて、3巻で完結しています。
『成瀬は天下を取りにいく』はAudibleの聴き放題対象で、再生時間は5時間4分です(2026年9月時点。対象は入れ替わることがあります)。本屋大賞の受賞作でAudibleにあるものの中ではいちばん短く、無料体験の30日で聴き終える最初の1冊に向いています。
ナレーターは鳴瀬まみさん。アーツビジョン所属の声優で、物語の舞台と同じ滋賀県の出身です。海外ドラマの吹き替えが多く、『ギルモア・ガールズ』(2007年)のキョン役、『エバーウッド 遥かなるコロラド』(2008年)の救急医役、韓国ドラマ『太陽の女』(2009年)のギョンミ役、『武士ペク・ドンス』(2012年)のファン・ジンジュ役、『デスパレートな妻たち』シーズン7(2012年)などに出演。映画『スピーク』(2011年)ではエルサ役を吹き替えています。ゲームでは『アイドル事変』(2015年)の若代愛菜役など。
成瀬シリーズとの縁は深く、別の配信サービス(audiobook.jp)の声優12名によるドラマ形式版では、1巻で成瀬の母親役、2巻『成瀬は信じた道をいく』で成瀬美貴子役を演じ、3巻『成瀬は都を駆け抜ける』(2026年)ではナレーションを担当しています。
本屋大賞の受賞作でAudibleにあるものの一覧は、ブログ「あの空の下」の本屋大賞の受賞作、Audibleで聴けるのは14作品にまとめています。2024年のノミネート10作は2024年本屋大賞:前を向くエネルギーをくれる10冊で紹介しています。
いちばん見られているのは、芸人の永野さんが「他人の目を気にして生きるべき」という持論と一緒にこの本を語った出版区の『成瀬は天下を取りにいく』回と、著者の宮島未奈さんがゲスト出演した太田上田で、どちらも30万回以上再生されています。受賞直後のカンテレNEWSは、舞台の滋賀・大津の側から取材していて、こちらも10万回以上見られています。
本の感想としては、文学YouTuberベルさんの受賞作レビューと、きすけ劇場の回が読みどころを具体的に話してくれています。シリーズ完結時の著者インタビューはテレ東BIZで見られます。
このほか、ノンの絶対刺さる本棚、むらかみ弁護士の本棚、PLANETSの批評座談会なども見て、このページをまとめました(再生回数は2026年9月時点)。