明治の終わりの北海道。山で犬と暮らし、ひとりで獣を撃って生きる猟師・熊爪が主人公です。冬眠しそこねてうろつく「穴持たず」の熊と向き合うことになり、そこから熊爪の生き方そのものが揺らいでいきます。
感想で何度も出てくるのは、描写の生々しさです。獣の匂いや雪の冷たさ、狩りの場面の息づかいまで伝わってくるようで、「読んでいるあいだ山の中にいた」と言う人もいます。生きることと食うこと、殺すことが切り離せない世界を、きれいごとなしで書いた本、という受け止め方です。
後半、盲目の少女・陽子が関わってきてからの展開には、読む人によって受け取り方にかなり幅があります。
熊と人の真っ向勝負を期待すると、話が思ったのと違う方向へ進んで戸惑うかもしれません。熊爪にも陽子にも共感しにくかった、という声もあります。逆に、そのわかり合えなさこそが題名の「ともぐい」につながっている、と読む人もいて、ここは読んで確かめるしかない部分です。
ブクログに感想が寄せられています。同じ回(第170回)は、万城目学『八月の御所グラウンド』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。