明治10年、東京・根津の遊郭。御家人の次男に生まれながら、武士の世が終わって行き場をなくした定九郎は、遊郭で客引きや見張りをする「立番」として働いています。花魁の小野菊、噺家の弟子だというポン太。新しい時代に取り残された人たちが、それぞれのやり方で生きています。
好きだという人がよく挙げるのは、全体を覆う空気です。けだるさと閉塞感、どこか夢の中のような妖しさ。定九郎がずっとふわふわしているので、物語もふわふわしている。その感じがくせになる、という感想もありました。登場人物の造形がいい、明治のはじめの空気がよく出ている、という声も見られます。
前半がなかなか進まない、と感じた人は多いです。落語や当時の世相の話が物語から浮いて見えた、言葉が難しい、という声もありました。時代の変わり目の気分を味わう本だと思って、ゆっくり読むのがよさそうです。
ブクログに感想が寄せられています。第144回は、道尾秀介『月と蟹』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。