生きる張り合いをなくし、地上げの仕事をしている中年の男。立ち退きを迫るために訪ねた路地裏の古いアパートには、奇妙な男が居座っていました。その男と酒を飲みかわすうちに、主人公は失ってきたものが詰まった過去へと引き戻されていきます。受賞後に書かれた「ひたひたと」も一緒に入っています。
「ずっと雨音を聞いているような作品だった」という感想がよく似合う、陰鬱で退廃的な空気の本です。喪失感に満ちた心の中の風景の描き方に惹かれた、という声がありました。映画化をきっかけに原作を読んで、原作のほうも奥深かった、と話す人もいます。
読みにくい、淫靡で息苦しい、という声もあります。女性の描き方が古く感じた、という人もいました。雨の日に、しんみりした気分で読むのが合っている本です。
ブクログに感想が寄せられています。第123回は、町田康『きれぎれ』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。