昭和の、本に囲まれた家に生まれた幼い子が、大きくなり、やがて両親を見送るまで。そんな一人の人生の記憶を描いた話です。ただ、書き方がとても変わっています。全文が横書きで、人の名前や地名などの固有名詞がなく、ひらがなが多い。ものの名前さえ、遠回しな言い方に置き換えて書かれています。作者の黒田夏子さんは75歳で受賞し、芥川賞の史上最高齢の受賞者になりました。
好きな人がまず挙げるのは、文章の美しさです。静かで柔らかく、記憶と時間がゆっくり流れていく。つかみきれない雰囲気に拍手を送りたい、という人もいれば、慣れてしまえば難しくも読みにくくもなかった、という人もいます。
評価はかなり低めに割れています。誰の話なのか分からない、言い換えが回りくどい、内容がつかめない、という声がとても多いです。筋を追うより、言葉そのものを味わう実験的な作品だと思って手に取るのがいいと思います。併録の短編は縦書きで、本の前からも後ろからも読める作りになっています。
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受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。