塙保己一は、5歳で視力を失いながら、並外れた記憶力で古い書物を集め、『群書類従』という大きな叢書を編んだ江戸時代の国学者です。この小説は、その偉業よりも、目の見える妻や学者仲間、弟子たちとのあいだに生まれる葛藤に光を当てています。
「見えること」と「見えないこと」の意味を問い直す人間ドラマとして読まれています。保己一を立派な聖人として描かず、弱さや身勝手さまで書いているところがいい、という感想が多く、章の題に二重の意味を持たせるなど、構成の工夫をほめる声もありました。幼なじみとの再会の場面で、保己一が本音をぶちまけるくだりが強く印象に残った、という人もいます。
擬音の多い独特の文体で、読み進めにくかったという声があります。人間関係の葛藤が重く、読んでいて苦しかった、という人もいました。『群書類従』を編む仕事そのものの描写は多くないので、歴史上の業績を詳しく知りたい人には物足りないかもしれません。
ブクログでは2,000人以上が本棚に登録し、190件を超える感想が寄せられています。第175回直木賞の候補作にもなりました。
受賞作・回・年は新潮社の「山本周五郎賞 過去の受賞作」によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。