宮城の海辺の町で暮らす40歳の植木職人・坂井祐治。東日本大震災で仕事の道具を流され、その2年後には妻を病気で亡くします。再婚した相手とも別れ、息子とのあいだにはぎこちなさが残ったまま。防潮堤が立ち、すっかり姿を変えた海岸を背に、祐治は働き続けます。
震災のあと、元の生活は戻らないまま続いていく日々を、淡々と書いた本です。無理に立ち直る話にしていないところが誠実だ、という受け止め方が多く見られます。作者の佐藤厚志さんは仙台の書店員でもあり、土地の風景の描き方に現実の手触りがある、という声もありました。
重く、読後感は明るくありません。同じような場面が繰り返される、主人公の名前が何度も出てきて文章が単調に感じた、という声もあります。回復や希望の物語を期待すると戸惑うかもしれませんが、そこにこそこの本の正直さがある、と感じる人もいます。
ブクログに感想が寄せられています。第168回は、井戸川射子『この世の喜びよ』との同時受賞でした。
受賞の回・出版社(掲載誌)は日本文学振興会の受賞者一覧によります。感想のまとめは2026-09-27に確認したものです。